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【ライブレポート】初の全国ツアーを完走!恵比寿LIQUIDROOMで掲げた誓い「ここから始めたいと思います!」

セカンドバッカー

ソングライター兼ギターボーカルのこうへいと、ドラマーのまさみによる、“あなたを支えるバンド” セカンドバッカーが、初の全国ツアー『言えなかったことばっかりだった。』のファイナル公演を東京・恵比寿LIQUIDROOMにて迎えた。EPリリース後に収録曲の「犬とバカ猫」がSNSを通じてヒットし、10月にはゴールデンタイムの音楽番組への出演を果たすなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らを目撃するべく会場には多くの若い男女が集まった。

 T.Rexの「20th Century Boy」をSEに、サポートベーシストの優月.に続き、まさみ、こうへいが順々にステージへと現れる。こうへいにスポットライトが当たり「『言えなかったことばっかりだった。』ツアー、今日は全部伝えて帰ろうと思います!」と高らかに宣言すると、EPの1曲目「告白」でツアーファイナルの幕を開けた。こうへいはこの日を迎えられた喜びを全身で表現するがごとく溌溂とした歌声を響かせ、まさみも笑顔で豪快かつ華やかなプレイを繰り出す。そんなふたりをたくましさとロマンチシズムを併せ持つ滝口のベースが支え、冒頭から3人の強固なグルーヴを鮮やかに印象づけた。

 こうへいが「皆さんは犬とか猫とか好きですか?」と切り出し、SNS総再生数20億回を突破したヒットソング「犬とバカ猫」を早速披露する。落ちサビで観客にシンガロングを促すと観客もそれにまっすぐ応え、ヒットが追い風となりリスナーから深く愛される楽曲に育っていることをうかがわせた。こうへいが「LIQUIDROOM最高です、ありがとうございます! ここまで観に来てくれたということは、僕たち“両思い”ってことでいいですか?」と告げると、間髪入れずに「両思い」を披露する。観客も即座にクラップを鳴らし、こうへいのギターソロでは大きな歓声を上げるなど、全身で音楽を楽しむ。メンバーたちもそんな観客に感謝を伝えるように、ポジティブで晴れやかな歌と演奏を届けた。

 フロアを爛々とした目で眺めるこうへいは「ヤバい、人多すぎ……!」と感慨に浸る。まさみが持ち前の明るさとトークスキルを発揮して会場を盛り上げた後は、会話の流れからスムーズに「別れた後で」へ。こうへいは感情を吐き出すように歌い、「なんだっていいわ。」は軽快なサウンドに乗せて感傷的な歌声を響かせた。

 その後、こうへいは中学時代に片思い相手の女子と同級生の男子と3人で遊びに行ったエピソードを語り出す。同級生の男子に差を付けようと、片思い相手と自分にぶどうのソフトクリームを買ったものの、それを彼女に手渡そうとした際に緊張も相まってソフトクリームを床に落としてしまったそうだ。そして片づけた後に再びソフトクリームを買いに行き、仕切り直して彼女に「一緒に食べよう」と言ったところ、彼女はぶどうが嫌いだった……というなんとも憐憫の情の湧くオチだった。その後に披露した「片思い」はこのエピソードが元になっているとのことで、より一層歌詞の解像度が上がり、心に染み入った。

 そのムードを引き継ぐように、ミドルナンバー「昔話」、ロックバラード「嵐の夜に」とメランコリックな楽曲を立て続けに披露する。こうへいの歌声にはセンチメンタルで寂寥感が溢れると同時に、それ以上のあたたかな力強さが漲っていた。心の中に巻き起こった感情をすべてぶつけながらギターをかき鳴らして歌う姿に、観客も熱い視線を送る。その後はまさみの軽やかなドラムが映える「ふたりぐらし」で空気を変えて、ベースリフに乗せてこうへいが「僕はまだ結局あの子のことが好きかもしれません」と告げ「結局」へ。リズムがユーモラスな空気を作り出し、アウトロのベースソロでは観客も大きな歓声を上げた。

 この場に集まった観客をはじめ、このツアーを支えたスタッフや対バン相手にあらためて感謝を告げたこうへいは、セカンドバッカーでは愛情を歌っていきたいということ、愛情とは誰かを許すことであると話す。人間は相手にどれだけ未熟なところがあったとしても、その人に対してどういうことをできるかを考え続ける心があるはずだと続け、「優月くんが“だから好き”より“だけど好き”だねと言ってくれた」「“こういう人だから好き”ではなく、“こういう人だけど好き”とちゃんと言えるような歌詞を書きたい。一生懸命頑張りたい」と、自身の信念をあらためて表明した。

 そして「時間を掛けて曲を作っても、売れるかどうかは絶対に誰にもわからない」「みんなが将来やりたいことをちゃんとできるのか、どういう人生になっていくかもわからない」と未来の不透明性に触れ、そんなことを考えていたときにまさみから「成功する秘訣は何だと思いますか? それは成功するまで続けることです」と言われたというエピソードを明かす。まさみの名言に観客から歓声が起こると、こうへいは「愛情をこめて一生懸命歌います!」と叫び、勢いよく「君とのこと」へなだれ込んだ。

さらに「セカンドバッカーここから、LIQUIDROOMから始めたいと思います!」とギアを上げて「月と太陽」「アダルトエイティーン」を気合いむき出しの歌と演奏で繰り出し、バンドのリアルを堂々と提示する。声を枯らしながら「不器用でごめんなさい、でも一生懸命これからも頑張ります! 夜露死苦!」と言い、本編ラストは「夜露死苦」。荒々しいギターソロも爽快かつ情熱的で、フロアからも多数拳が突き上がった。

アンコールでは観客とともに乾杯し、ツアーの思い出話に花を咲かせる。そして最後にまさみがこうへいにツアーの総括を求めると、こうへいは人生において言えなかったことばっかりで、先述のぶどうソフトクリームのように、大切な人を喜ばせるために熟考して出した答えが間違っていることも多々あったと振り返った。そして「誰かに対して何かをしたいという気持ちがあったら、それがたとえ相手にとって間違いだったとしても、良かったよと言われなかったとしても、何かをしてあげたいという気持ちが自分にあればそれで充分なんじゃないかと本当に思う」と告げるものの、その後は胸の内をうまく言葉にできず、口ごもってしまう。

そんな自分へのもどかしさからか「自分はこんなにも何もできなくて、借金あって、地位も名誉もなくて、俺に何があるの!?って思うの!」と言うこうへいに、まさみがすかさず柔らかい表情で「そんなこうへいくんに唯一残っているものはなんですか?」とスマートに助け船を出した。するとこうへいの表情が急に明るくなり「まさみくんがメンバーで良かった! 俺には言葉と音楽があります! しっかりやっていきます、よろしくお願いします!」と叫んで「バンドマンとして」を歌い始めた。パンクナンバーを体当たりで届けるものの「全然足りない! できないことばっかだし、わからないことばっかりだけど俺はもっとあなたのことが知りたいし、もっとあなたの声が聞きたい! 不器用だけど一生懸命やりたい!」とリミッターを外し、再度同曲を演奏した。まさみと優月.もこうへいの感情の波に乗るように演奏に没頭し、盛大な花火を打ち上げるような高揚感のなかツアーの幕は閉じた。

2024年11月の初ワンマン以降のセカンドバッカーは、東名阪クアトロワンマンツアー、初の全国流通盤リリース、同作収録曲が過去最大のバイラルヒット、初の全国ツアー、大型タイアップ決定などトピックが目白押しで、まさにバンドの過渡期だった。このツアーファイナルは荒波のような日々を一生懸命走り抜けるなかでたどり着いた、彼らの新たなスタートラインと言っていいだろう。未来はどうなるかわからない。だがセカンドバッカーはさらにその威力も速度も上げられるはずだ。そう確信せざるを得ない、純度がほとばしる熱演だった。


文:沖さやこ
写真:ゆうと。


2025.10.21 恵比寿LIQUIDROOM
セカンドバッカー 初全国ツアー
「言えなかったことばっかりだった。」
ツアーファイナル
01:告白
02:犬とバカ猫
03:両思い
04:別れた後で
05:なんだっていいわ。
06:片思い
07:昔話
08:嵐の夜に
09:ふたりぐらし
10:結局
11:君とのこと
12:月と太陽
13:アダルトエイティーン
14:夜露死苦
En.バンドマンとして

-セットリストプレイリスト-
https://secondbacker.lnk.to/tour_ienakattakotobakkaridatta

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