いまみれん OFFICIAL INTERVIEW
2026.03.14
いまみれん

――今はもうこっち(東京23区内)に住んでるの?
いまみ:こっちに住んでます。
――いつから?
いまみ:高校を卒業した時なので、19くらいの時からですね。
――生まれは、八丈島だよね。
いまみ:八丈島です。(上京して)最初は、八王子に住んでて。
――こじつけるわけじゃないけど、街の風景とか息遣いとか、流れてる空気感とか、そういうのって曲にいれたくなるよね。
いまみ:ああ、そうなんですね。僕自身はあんまり意識したことないですけど、無意識に入れてるんですかね。
――そんな感じ、するけどなあ。小田急線沿いに住んでることに「あ、なるほどな」と思ったな。
いまみ:ああ、たしかに(笑)。なんだろう? やっぱり、内地の人と島の人は違いすぎて。
――うんうん。
いまみ:でも、引きこもってるから、そんなに(自分が住んでいる)街の情景を入れてるつもりなかったんですけど、反映されてるんですかね。
――言ってみれば、港区に住んでいる人の音楽では全然ないわけで。でも、それがいいと思うな。
いまみ:ああ、たしかに。それはそうかもしれないですね(笑)。
――いまみれんという人は、自分自身が作りたいと思っているものとか、自分自身らしさみたいなものを自分のなかでかなり自覚をしているアーティストだと思うんだよ。
いまみ:自覚……あんまりしてないと思ってるんですけどね。曲作りを始めた時とかは、「癖あるね」みたいなことをよく友達に言われてて。「っぽい」みたいなことをよく言われてたから。でも、自分では、癖があるとはあんまり思ってなくて。「癖あるんだ」という感じで作ってますね。
――うんうん。作っていくなかで「これ、俺っぽいな」みたいな。
いまみ:はい。それこそ、Queenのコーラスっぽいものを入れた時とかは「自分っぽいな」とは思うけど、自分のオンリーワンとして入れているようには感じではなくて。そういうもの、みたいな感じで作ってるかもしれないです。
――なるほどね。それは、いまみれんの――なんて呼んだらいいのかな?
いまみ:“いまみ”でも、なんでも(笑)。
――じゃあ、れんくんと呼ぼう(笑)。でも、いまみれんの音楽として、すごく共通した手触りがちゃんとあるよ。
いまみ:ああ、本当ですか。
――そう言われると、「あ、そうっすか」って感じ?
いまみ:「へえ〜」みたいな。あんまり意識してないかもです。
――なるほどね。そうすると、曲を作っていくなかで、「これで仕上がったな」「これで完成だ」っていう感覚は、何をもってそういうふうに判断するんだろう?
いまみ:「仕上がった」っていうよりも、楽器を弾く体力が10分、15分ぐらいが限界だから。ウルトラマンと同じで、アラーム鳴ったらもう終わり、みたいな(笑)。だから、その間に出てきたものが完成形みたいな感じで。突き詰めて作るっていうよりは、自然に発生したものが作品で、飽きたら終わり、っていう感覚ですかね。
――今から集中する時間、というものに限りがあるんだ。
いまみ:メロディが急に思いついて、「なんか作ってみようかな?」って作って、必然と10分、15分で終わるっていう。「やるぞ!」っていうよりも、本当に何も考えずに作って、気づいたら終わってる、みたいな。
――「思いついた」「あ、これメロディ思いついたな」って思っても、15分後には「ああ、疲れた」っていう。
いまみ:そんな感じで作ってますね。
――その時間でどこまで作れるものなんですか。
いまみ:調子がいいと、Aメロ、Bメロ、サビがもう全部できます。1番ができるくらい。でも、大体はサビができあがるくらいかな。一旦サビさえ作っちゃえば、「Aメロ、Bメロはこんな感じなんだろうな」ってなんとなくの予想がつくので。サビをポンって作って終わりみたいな感じですかね。
――じゃあ、一日に何回もその15分の瞬間がくるわけじゃないのかな。
いまみ:本当に体調によって、一日に3、4回くる時もあるし、ここ最近は全然あんまり降ってこないし。まばらです。
――なるほどね。不安になったりする? 「1週間こないな」「幾月が降ってこないな」っていう。
いまみ:最近不安です。もう全然――。
――降ってこない?
いまみ:こなくて。でも、無理矢理作ろうと思えば作れはするから、それでちょっと安心する、みたいな感じです。一回無理矢理作って、「できたからいいや」みたいな。
――うんうん。それは、ある種テクニカルに作るっていうことだと思うんだけど。それでも自分自身が満足する曲はできたりする?
いまみ:うーん……テクニカルっぽく意識して作る時は、7割ぐらいボツにしちゃうかもしれないですね。3割ぐらいは採用できるけど、半分以上は「ボツだな」って思って作り終わるみたいな感じかも。
――でも、「なんとか作んなきゃ」っていう曲にも、れんくんの手垢みたいなものがいい意味でちゃんとついてると思うよ。
いまみ:たしかに。もしかしたら、1週間後、2週間後に聴いたらいいメロディだと思うかもだけど。心が乗っかってない時に作ってる曲は、なんか惰性で作ってる感じがして。もしかしたらいいメロディかもだけど、全部ボツみたいな。
――一旦ボツの箱に入れといて。
いまみ:うん。ボツの箱に入れるみたいな感じです。
――1ヶ月後とか2ヶ月後とか経ってからまた聴いてみて、「メロディとしてはいいかも」みたいなことだよね。
いまみ:そうです、そうそう。そういうことがたまにあるぐらいですかね。
――そのボツの箱にもいっぱい入ってるんだ。
いまみ:そうです。大体ボツにしてます。
――それは、やっぱりいい/悪いというよりも、過程にシンパシーを持てないっていうことだよね。
いまみ:そうです、気持ちよくないから。乗っかってる感じがないとあんまり楽しくないな、って。
――うんうん。その乗っかってる感じっていうのが、れんくんにとって今すごく大事な感覚なんだと思うんだよ。乗っかってる感じっていうのは、もっと具体的な言葉で説明してもらうと、どういう感じなの?
いまみ:うーん……歌っててすごく気持ちいい、快感を感じるぐらい気持ちいいメロディに乗っかってるというか。なんだろうなあ。ちょっと喩えが変なんですけど、ムラムラしてる時に観るAVみたいな。
――はははははは! わかるわかる。
いまみ:ムラムラしてないのに惰性で観るAVはボツ(笑)。
――うんうんうん。なるほどね。ちょっと文学的な言い方になっちゃうけど、時間と感情がちゃんと縦に積み重なってる時間というかね。
いまみ:ああ、そうです、そうです。うん。本当にそんな感じだと思います。
――ペタッとした時間を積み重ねるんじゃなくて、ちゃんといろんなものが積み重なってる時間をボコッと出すっていう。まさにいまみくんの音楽はポップソングだと僕は思うんだけれども。みんなどのアーティストも3分から4分の曲が多いわけじゃない? じゃあ、その3分か4分にどんな3分、4分の凝縮度があるんだろう、っていう。そういう自問自答を日常レベルに落とし込むと、ムラムラしてる時に観るAVっていう言葉になるのかな。
いまみ:そういうことだと思います。大事なのが、自分がどれだけ気持ちよくなれるか、っていうことで。そうなんですよね。だから、3分のあいだでどのぐらい自分が気持ちよくなれるかが大事なんですよね。「気持ちよくなりたいな」っていう時に作る曲は、ちゃんと乗っかってる感じがします。
――そうすると、気持ちよくなれる時間っていうのは、いつもいつもくるわけじゃない?
いまみ:そうですね。
――その頻度は、曲を作り始めた時と今とで変わってる?
いまみ:最近は薬の影響もあって、ドーパミンみたいなものをほしくなくなってきた感じがあるから、最近は「気持ちよくなりたいな」って思う頻度は落ちていて。でも、それこそ曲作り始めた時、大学2年生ぐらいの頃は引きこもってて、何もすることない時とかは、もうありえないぐらい(曲作りを)やってましたね。4、5曲ぐらい、バーって作ったりしてる時もありました。
――その時はきっと、まだ世のなかとチューニングが合ってなかったんだろうね。
いまみ:たぶんそうですね。全然チューニングが合ってなくて、社会と断絶して……ろくでもない生活を送っている時に、現実逃避で曲作ってました。
――うんうん。その時代の曲って今でも残ってるの?
いまみ:1曲目に出した「求める nor i」とか、2曲目のピザの曲(「怒号外生地〜Made in Pizza〜」)とかが、その時期に作った曲で――いちばん頭おかしくなってた時期の曲が、その2曲ですね。
――なるほどね。その頭がおかしくなってた時期を今振り返ると――あるいは今も渦中にいるかもしれないけれど――どういう時期だったのかな。何があって、何がない時期だった?
いまみ:自分の理想と現実の乖離があまりにもありすぎることのギャップで苦しんでて。それで苦しんでるのに、まわりの同級生は飲み会とか「大学生活楽しい!」みたいなのをやってて。羨ましいけど、「こんな自分はやっちゃいけない」みたいな、そういう遊びを。でも、羨ましいし、妬みとかもあった。あと、今よりも体調が悪くて、まず外に出れないとか……なんか、プレッシャーだったんですよね。最初は専門学校に行ってたんですけど、3ヶ月で辞めて、大学に入り直して。大学に入ったら体調よくなるかなと思ったら、治らなくて、むしろ悪化しちゃって。親に対するプレッシャーとか、地元の人たちはみんな明るい生活をしてるのに俺だけとんでもないくらいレールから外れちゃってるし、焦りもあって。まわりのことを気にしなければよかったんだけど、気にしすぎて、「あまりにも自分が惨めすぎる」って。
――今はどう?
いまみ:うーん……今は、まわりはまわりの人生があって、自分は自分の人生があるんだなって思うようにはしてるんですけど。でも、その頭がおかしい時期があったから、今の自分があるとは思いつつも、やっぱり大学4年間でもうちょいなんか遊んだりしたかったな、って。後悔というか、「ドブに捨てちゃったな」というふうに思ったりもしますね。
――うんうん。そういう時期って、多くの人にとっては甘美なものというか、どこかピュアに自分に向き合えている時間でもあって。多くの人にとっては、甘美な時間に酔いしれてた時期でもあると思うんだよ。その感覚って、れんくんのなかではどう?
いまみ:大学2年生くらいになると、やっぱりみんないろんなところに遊びに行ったりするし、飲み会とかも多いし。地元の人のインスタ(Instagram)とかを見ると羨ましいことばっかりしてて。そういう時に、甘美な実感というふうに思ってたわけじゃないけど……僕がよく言い聞かせてたのは――たとえば、ペットボトルの決められた量みたいに、みんなが平等に楽しめる時間があるとしたら、大学1、2年生で遊んでるヤツらは、このペットボトルの蓋を開けてバーって全部こぼしてる。あいつらが将来社会人になって、今の俺みたいに自分と向き合わないで、「将来こんなはずじゃなかった」とか「いろんなことと向き合っとけばよかった」って後悔してる時に、俺は「女遊びするぞ!」みたいな(笑)。
――はい(笑)。
いまみ:そう言い聞かせてましたね。1、2年生の時は、よく遊んでるヤツらはバカみたいだって思ってたけど、羨ましくもあったんですよ。酸っぱい葡萄と同じで、自分が手に入れられないから「いらない」って言ってました。さっき「大学生活をドブに捨てた」ってさっき言ったけど、自分と向き合うのにおいては、モラトリアム的に必要な時間ではあると思っていて。社会人になったらこんなに悩み込めないから、今のうちに全部吐き出してしまおうというふうに思ってた気がします。
――なるほどね。そうすると、今はその吐き出す時期はある程度超えたな、というか。
いまみ:そうですね。ちょっと超えましたね。
――うんうん。またさっきの話に戻っちゃうんだけど、その抜けた状態って不安には思わない?
いまみ:昔だったら、子どもみたいな嫉妬の仕方をしてたけど、大人になって、まわりはまわりで、自分は自分という区別が最近つけられるようになって。そこで、今までの嫉妬とか妬みで原動力にして作ってたものが作れなくなるんじゃないか不安になってたんですけど、でも、根底にある妬みとかがすべて消えたわけではないし。不安もあるけど、そういう妬みを掘り返して作れる気もしてます。それに、アーティストなんて途中からどんどん考え方が変わっていくもんだとも思うから。自分が将来、どういう価値観で生きていくかわかんないけど、変異していってもいいのかなとも思ってます。
――今まさにその変異する鳥羽口に立っているというか。そういう感じがある気がする。
いまみ:うん。ありますね。
――すごくいいと思う。
いまみ:本当ですか。
――うん。僕は音楽を聴いて、きっといまみくんには、妬みとかフラストレーションみたいなものが原動力になっていた時期が確実にあったんだろうなと思ったんだよね。で、実際に収録されているわけで。なんだか結論みたいな話になっちゃうけど、れんくんは音楽家だと思う。だから、大丈夫だと思う。たぶん、成功したりすればファンが目の前に何千人といて、妬みもクソも全部を愛してくれる人たちの前で、「何が妬みなんだろう?」っていう気持ちに絶対なるんだよ。でも、そこで原動力がなくなったので曲が作れなくなっちゃうんじゃなくて、ちゃんと音楽家として成熟していける人だと思う。才能、持ってるよ。
いまみ:本当ですか。嬉しい。
――そう言われるとどう? 音楽家としてさ。
いまみ:最近、本当に曲が衝動的に作れなくなってきてるから。今まで積んでたエンジンを一回下ろして、違うエンジンをつけないとなとは思ってて。それこそ、音楽家として興味あるジャンルもいろいろあるし、「アイドルの曲を作ってみたいな」とか思ったりもするし。区分けしようと思ってるんですよ。衝動っぽく作れる時はそのまま作って、でも少し意識して、(音楽)理論とかは勉強したことないけど、ちょっと学んで、狙って作る才能がワンチャンあるんじゃないかな、みたいな。最近、ちょっと鬱っぽいから、「スランプだな」とか思ったりもするけど、内心どっかで「そこら辺のアーティストには負けないな」みたいな。負けたくないっていうのもありますね。
――うんうん。いろんな瞬間がくると思うんだよ、これからも。フラストレーションが一気に全身に駆け巡っちゃって、吐き出す時もきっとあるけれど、そうじゃない時に「この曲は自分っぽくてすごく好きだな」って思える曲がどんどん出てくると思う。最初にれんくんの音楽を聴いた時に思ったのは、そんなことだったんだよね。テクニカルに作れる部分もあって、それはエゴとしてじゃなくて、筋肉の部分というか、身体性というか。れんくんはちゃんと持ってるよ。
いまみ:ありがとうございます。嬉しい。
――だから、思う存分鬱になったり、思う存分躁になったり、思う存分普通になったりしていいと思う。どこから出てきた曲も、ちゃんとあなたの手垢がついてますから。
いまみ:ちょっと安心しますね、その言葉は。
――いまみれんっぽいかどうかっていうのは、本人が決めることでもあるけど、まわりが決めることでもあるじゃん。まわりからの視線というかね。その感覚は、れんくんがゲロを吐くように書いた曲も、絵を描くようにさらっと作ったものも、同じように愛してもらえるよ。
いまみ:めっちゃ嬉しい。それこそ、「ゲロ吐くぐらいの気持ちで作んないといけないのかな」みたいに最近は思いすぎてたから、ちょっと安心します。
――それを、本当は最後に伝えようと思ってたんだけど(笑)。
いまみ:(笑)。
――「ゲロを吐くように作んなきゃダメなんじゃないか」って思って、本当にゲロを吐いてるようにして作った曲がここには詰まってて。ただ、そのゲロっていつまでも出ないものでもあって。
いまみ:そうなんですよね。自分で指突っ込むみたいな感じになっちゃうから。
――そうそう、本当にそうで。
いまみ:ちょうどこのインタビュー受ける前日とかも曲作れなくて、「ゲロ吐かないとかな」みたいな感じだったから。そう言ってもらえると安心します。
――ゲロが吐ける時は吐けばいいんだけど、吐けない時は音楽家としての運動をすればいい。その曲もちゃんと君の曲だよ。
いまみ:ありがとうございます。たしかに、そうですよね。
――うんうん。でも、このEP(『僕はtoyじゃないよ!』)は、一生に何回も作る作品じゃないと思うんだよ。れんくんとしては、このEPがどういうものになったと思っている?
いまみ:デモは、全部15分とか20分ぐらいで作り上げてるんですよ。本当、衝動的なのもあるし。「シネ・マ(・ジレンマ)」は、「バラード作ってみてほしいんだけど、どう?」って提案されて、それで意識的に作ってみたりとか。2曲はちょっと自分なりに考えてやってみて、ほかの曲は衝動で、みたいな。だから、バランスがちょうどいい。衝動だけでもないし、ちょっとテクニカルっぽく作っていて、「今後はこんな感じでやっていきますよ」みたいな感じ。ジャンルも全部がちょっとずつバラバラで、ロックっぽいわけでもないし。なんていうのかな……本当に好き勝手やってるというか。わかってほしいというか………うーん、なんだろうな。「本当にただ気持ちよくやってるんだな、この人は」って、わかってもらえればいいんじゃないかな、って。
――うんうん。
いまみ:ジャンルもバラバラだし。「この人は、思いつきでやってるんだな」っていうふうに、ちょっとわかってもらえると嬉しいかな。今、変に「いまみれんはこういうジャンル」っていうイメージみたいなものに当てはめられると、困っちゃうというか。ほかにもいろいろやりたいことがあるから、一旦今回は5曲で、今からこのあと6曲目、7曲目とかを出していっても、全部受け入れてもらえるような感じにはなるんじゃないかなって思ってます。
――なるほどね。やっぱり1枚目だし、ちゃんと過不足なく自己紹介しようっていう。
いまみ:そうですね。Queenっぽいのもあるし、ちょっと奥田民生っぽいのもあるし、みたいな。あとから驚かれても困るから、今のうちに先に「こういう感じでやっていきますよ」って言っておくというか。
――うんうん。今、「Queenっぽいもの」「民生さんっぽいもの」って言ってくれたじゃない? そのあたりは、「っぽいもの」っていうよりも、「そういうものを聴いてきたんだからしょうがないじゃん」みたいな感覚?
いまみ:普通に、そういう曲が好きというか。「自分の好きな曲だから入れ込みたい」っていうのもあるし、昔からそれっぽいものを作るのがちょっと得意で。全部はできないけど、〇〇っぽい曲を作る遊びをして、そこに自分の要素もちょっと入れて。今、Queenとか民生さんみたいな曲を模倣してるような同年代のアーティストはあんまりいないと思うんです。でも、自分はそれが好きで。だから、みんなとは別ジャンルでやれる気がして作ってるところもあるかな。
――なるほどね。「っぽいもの」って自分で言ってくれたけども、まさに「ボヘミアン・ラプソディ」のインタールードのコーラスみたいな部分もあるじゃない? 民生さん風のハモリ方も、まんまなところがやっぱりあって、
いまみ:そうですよね。
――誰がどう聴いてもまんまで、れんくん自身からしてもまんまなんだろうと思うんだよ。でも、その手前には「どれだけまんまなことをやったって、俺のゲロなんだから」っていうような、自信というか開き直りというか、そういう感覚があるんじゃないのかな思ったんだよね。それ言われるとどうかな?
いまみ:開き直り……うん、あるかもしれないです。普通にこれが好きだから。オマージュは、もとのものを超える必要はないと思ってるんですよ。で、オマージュ先とは別軸で、違う味付けにして、「これもありだよね」っていう感じで、違うよさを出せるようには意識するようにしてて。雰囲気がもろパクりで、曲自体もパクりだとよくないし、かといって好きなアーティストを超えてやろうとも思わないから。趣味の延長線上になっちゃうけど、自分は自分の好きなアーティストにプラスでちょっと自分の好みも足して、みたいな。そういうところの自信は、ちょっとあるかもしれないです。
――その自信が、れんくんのなかにあるオマージュをする時のマナーだよね。そのマナーがかなり強くあるから、できることなんだと思う。
いまみ:たしかにマナーはちょっと意識してるかもしんない。
――うん、そうだね。すごく難しい調合をしている。素晴らしいと思うよ。オマージュが好きだと表明する以上、パクりになってはいけないっていうかさ。
いまみ:パクりになっちゃいけないけど、本当にオマージュにしないといけない。ワンチャン、いつか民生さんと一緒にこの曲が歌えるってなった時に、失礼にならないようにしなきゃ、というか。「好きなんです」って、ラブレター的な感じでちゃんと作ってるから。
――うんうん。初めて音楽作ったのはいつ?
いまみ:初めて作ったのは高校2年生じゃないかな。16か17の時だと思います、初めて作ったのは。
――それまでも、音楽というものはそばにあったの?
いまみ:小学5年とか6年の時に、ヒャダインのCDを買って。それとゲスの極み(乙女)と、あと島にINSPiっていうアカペラグループがきたことがあって。その3つが好きだったんです。でも、中学はサッカー部に入って、音楽はまったくやってなくて、曲自体も――これは今もそうなんですけど――あんまり聴くのが好きじゃなくて。音楽が身近な家でもないし、どっちかと言うと、歌ってたら「うるさい」と言われるような家だったから。でも、小学生の頃から歌が好きではあって。で、急に高2ぐらいの時にQueenにハマって、爆発したんですよ。「やっぱり、これやりたい!」みたいな感じで始めて。
――突然、「やっぱりやってみよう!」って?。
いまみ:なんでかはわからないんですけど、小学生ぐらいの時から、なぜか自分には音楽の才能があるかもって思い込んでて。低学年ぐらいの時とかに、『Mステ』(『ミュージックステーション』)を観てて。音楽番組って、(画面の下に)歌詞が出てくるじゃないですか。で、歌が流れてて、そのあとに出てくる歌詞が表示される時に、次のメロディがどういうメロディなのかを当てるゲームをよくやってて。全然当たんなかったけど、「自分だったらこうするな」って、漠然と考えてたんですよ。小学校の時の卒業式の夢も、何もやってないのにシンガーソングライターって言ったり漠然とあった。で、Queenの映画(『ボヘミアン・ラプソディ』)を観て、「やっぱり、これやりたい」って。ずっとやりたかったんだろうけど、やるきっかけがなくて、高2ぐらいで爆発した感じというか。
――曲を作る前から、作るトレーニングはずっとしていたんだね。
いまみ:あと、意識的にアカペラでもよくハモりを聴いてたりしていたんですよね。それがQueenとの親和性がよかったのかもしれないです。小学校の時にアカペラが「気持ちいいな」と思って、いろんなハモりを聴いてて。そこからのQueenだったから。もっと早くQueenを知ってたら、たぶんもっと早くやってたんだろうな。
――高2の時初めて作ったのは、どんな曲だったの?
いまみ:うわあ、どんな曲だったんだろうなあ(笑)。いちばん最初に作った曲はあんまり覚えてないんですけど、でも今とあんまり変わらないコード進行で適当に作ってたと思います。高校生の時に、ネットでアレンジャー探したことがあって。一曲をちゃんと完成させた時は、オーケストレーションとか、それこそQueenのコーラスみたいなのを入れて作ったんですよ。短調っぽい感じでやってた気がするんだよなあ。今の自分が作ってる曲とは、また全然違う曲でしたね。
――曲を初めて作った時は、どういう感情になった?「あ、これだ!」とかさ。
いまみ:その時からずっと自分が「気持ちいい」と思える曲を作ってたんですかね。まわりからは「癖あるね」みたいに言われてたけど、「でも、俺はこれが気持ちいいんだよな」って。曲を完成させることよりも、その過程の気持ちよさのほうが当時は今よりも大事だったから。歌詞を書くのもあんまり好きじゃなくて。メロディとコードが気持ちよければもういいじゃないかって思ってました。
――なるほどね。じゃあ、スタートは歌手じゃなかったんだ。
いまみ:歌手じゃないです。今も(歌詞を)書くのはちょっと苦手意識があるくらい。歌詞よりも、メロディとコードがいかに気持ちいいかが重要ですね、ずっと。
――うんうんうん。曲の生まれ方っていうのは、まずコードとメロディなの?
いまみ:コードとメロディです。適当な日本語とかで歌いながら作って、たまにいい感じの日本語というか、いい歌詞が出てきたらそれを採用する時もあるし、両方一気にくる時もありますかね。大体はメロディが優先的で、あとから歌詞が追いついてくることが多い。
――いい表現だね。本当にそういうふうに生まれてるんだろうなって感じがする。メロディと歌詞が完全に別で作られてる感じはしないというか。
いまみ:そうですね。あとから詞を書く時間を作ることもないから。メロディが早足みたいな、駆け足でちょっと先に行ってる感じはあります。
――きっと、れんくんにとってそれがいちばんいいバランスなんだね。
いまみ:そうだと思います。
――このEPは、もう一旦自分の手元から離れたわけじゃない? その今、どんなことを思っている?
いまみ:「次、どうしようかな?」みたいな。やり切ったとまでは思わないけど、たとえばマジシャンで喩えるとしたら、代表的なネタは使った状態だから。次からどういうネタでお客さんを面白がらせるか、というか。一旦の自分の代表的な5曲を出して、「次はどうしようかな?」っていう状況です「何を作ろうかな?」みたいな。
――まだ曲はいっぱいあるよね。
いまみ:いっぱいあります。いっぱいあるから、「どれを選ぼうかな?」とか思って。あと、いろいろ曲を聴いて勉強したいなっていう感覚です。
――ちなみにさ、れんくんの一日っていうのはどういうふうにできているの? もちろん毎日一緒じゃないと思うんだけれど。
いまみ:鬱っぽい時は、本当に寝てるだけ。歳によってサイクルが違って、ここ最近は本当寝てる。あと、考え事を毎日タブレットに書き出したりしてます。もうちょっと鬱っぽくない時は、ゲームしたりとかほかのことをやってて、音楽は思いついたら作る。「求める nor i」ができた時は、毎日8時間ぐらいAV観てたんじゃないかな(笑)。
――はははははは! そうなんだ(笑)。
いまみ:「求める〜」の時期は、頭がおかしすぎて。一日に7、8回ぐらい自慰行為して、「なんか俺ってダメな人間だ」って思って、メンブレして。そういうのを何ヶ月も続けてました。
――なるほどね。
いまみ:マック食べて、ガブリチュウ食べて、深夜散歩をしたり。時期によって全然違うかもしれないです。最近はなくなったけど、前に住んでた家のベランダからずっと唾を落としてる時期とかもあったし。様子がおかしい時期のほうが曲はいっぱい作れてた気がする。けど、最近は薬も飲んでるからも、ミニマムに引きこもってるみたいな。
――うんうん。
いまみ:本当に音楽があんまり出てこないですね、日常のなかに。曲聴いたり、映画観るとかもあんまりなくて。ただただ自分と内面と一緒に向き合って考え事すると、一日が終わっちゃう感じ。
――その内面の対話っていうのは、「俺って何なんだろう?」「俺ってこんな奴なのかな」というふうに自分に向かうもの? それとも、人間とか世のなかに向かっているもの?
いまみ:両方だけど……最近は「自分ってどういう人間なんだろう?」とか。昔も考えてたことけど、年々矛先が自分だけにしか向かなくなってきてる感覚はあります。昔だったらまわりが気に食わなくて敵対視してたけど、今はそれもちょっと包み込んであげようと思って。最近は、ようやく自分だけに矢印が向いてきてて。たとえば、自分が一般的な価値観とは違う価値観があるとしたら、それはどうして形成されてたんだろう、みたいな。幼少期から逆算して考えていって、「こういうことがあったからこうなんだ」とか、その意味付けをするのが好きで、過去のことを思い出しながら振り返ってます。「だから自分はこういう性格なんだ」とか「だからこういうことを考えやすいんだ」っていうふうに。大学が心理学部だったのもあったから、自分を心理的に分析するのを最近はよくやってるかな。
――言葉にしていることとか今の悩みとか、自分が向き合ってるものがやってきたところを探すってことだね。
いまみ:そうです、そうです。
――まさに心理学的なアプローチで、ユングやフロイトの世界だよね。それが見つかると安心する?
いまみ:安心します。なんか納得できるというか。自分にとっては、納得がすごく大事だから。納得できないとあんまり好きじゃない。納得するまで考え続けます。
――その行為と音楽は紐づいてるの?
いまみ:うーん……今はそんなに紐づいてないんですけど、いつか紐づくだろうなとは思ってて。大学生の時から、ノートとかタブレットに感情を書き殴ったりして、思考をずっと蓄積してあるから。衝動的に作れなくなった時のために、自分が何を考えてたか、どういう思考を持ってたか、どういう感情だったかを全部メモとして残してて。だから、今後たぶん使っていくんだろうなと思ってますね。
――その感情バンクから金を下ろす時があるかもしれない。
いまみ:はい。もうそろそろかな。「そろそろ下ろそうかな?」みたいな気持ちです。
――でも、その存在は結構支えになるよね。いざとなればあるから、っていう。
いまみ:そうです、そうです。いざとなったら、振られた時とかいろいろあった時のことを書いたノートがあるし、って。「あれを使おう!」みたいな感じで残してます。
――なんで振られちゃったの?。
いまみ:振られるのは、なんでだろうな(笑)。初めての彼女は3年半ぐらい付き合って、別れる1ヶ月前に「どれが本当のあなたかわからない」って言われて。でも、「僕もわかんないよ」みたいな。その時、たぶん躁鬱になりたてで、僕も引きこもっちゃってたから、もう別れるしかないと思って別れて。ふたり目は、自分がなんかあまりにも子どもすぎたし、嫉妬深すぎたのがある気がします。うーん……なんで振られるんだろう? そんなに恋愛してきてないから統計はないけど、ひとり目、ふたり目の時の自分は、たぶんめんどくさかったんだと思う。
――なるほどね。
いまみ:振られて仕方ないぐらい、だいぶめんどくさかったから。それこそ、8時間ぐらいAVを観てる時期だったから、ろくでもなさすぎる。叫んだりして、情緒もおかしかったし、外に出ても気持ち悪くなっちゃうから、一般的なデートとかもあんまできなかったし。普通に恋愛がしたい人とは、あんまり恋愛するのには向いてなかったんだろうなって思います。
――うんうん。今は、多少は生活らしい生活になってる?
いまみ:今はちょっとずつ落ち着いて、よくも悪くも普通の人っぽくはなってきてる感覚はあって。それに満足してる時もあるし、してない時もあるけど、昔よりもちょっとは普通の人間っぽくなってきてる気がします。
――思う存分、普通の人間っぽくするのもいいと思います。さっきも言ったけど、それでもれんくんはれんくんの曲をちゃんと作れるから。
いまみ:ありがとうございます。
――ちゃんとうまいこと食べて、ちゃんとした時間に寝て。
いまみ:うん。今、いい感じに過ごせてる気はします。
――音楽を作って、メロディーとコードが先に出てきて、それをちょっと後ろから追っかけてくるように言葉がついてきて、最後に歌うわけですよ。自分の歌というものは、れんくん自身はどういうふうに思っている?
いまみ:何を思うかな? うーん、「こんな声なんだ」みたいな。
――おお、そうか。
いまみ:歌い方もどんどん変わってきていて。僕、どちらかと言うと、結構歌声を変えられるタイプだと思うんです。モノマネも結構よくしていたし、カラオケとかでも自分の地声で歌うことも今まであんまりなくて。初めてのレコーディングか、それよりもちょっと前くらいまでは、ちょっとミヤジ(宮本浩次)っぽく歌ってる時とかもあって。憑依させて歌ってた感覚みたいなのがあったんですよ。それを一回取り除いて、普通に自分っぽく歌ってみるっていうのが難しかったです。初めてのレコーディングの時、考えすぎちゃって。「どう歌ったらいいんだろう」って。最初の30分くらい、掴めなくて。のちのち、いい感じに引き出してもらって、自分の歌い方が戻ってきたけど。
――なるほどね。
いまみ:あ、そうそう。僕の歌声、小学生の頃から「癖が強い」ってよくバカにされてたんですよ。意地悪な感じでそう言われるっていうよりも、「歌が上手いけど、なんか癖強いよね」って言う感じで、小学生の頃からずっと言われてて。この前、地元に帰って友達とカラオケに行ったんですけど、「上手いけど、癖が強い」って言われて。その時から、これが味なんだろうなと思うようになって。癖、強いのかな? 自分ではそんな強くない気がするけど、まわりの人は癖が強いと思ってるみたいで。カラオケですごく歌が上手い人というよりも、そこにプラスしてちょっと癖がある、みたいな。
――うんうん。僕、れんくんの歌すっごくいいと思うよ。
いまみ:あ、本当ですか。?
――すごいと思う。初めて音楽を作って、初めて歌った時からきっとこの歌い方をしてるんだろうなって感じがしていて。いろんな歌い方ができると思うけど、いちばん背骨の部分はたぶん最初から何にも変わってないんじゃないかな。
いまみ:ああ、そうですね、たしかに。文化祭で歌った時も、今みたいな感じではあったかもしれない。
――自分の歌のいちばん強く出せるスタイルみたいなものが、あらかじめわかっていたんだろうなって感じがする。
いまみ:それはあります。
――初めて歌った時に「あ、俺の歌って何かを持ってるかも」「なんか力があるかも」みたいな実感がどこかにあったんじゃないのかなって気がしたんだけど、そう言われるとどう?
いまみ:「持ってる」というか――普通に「自分の歌は上手いな」とは思ってたんですよね。
――うんうん。
いまみ:自分的に「これがいい」と思ってる歌い方が、たぶん今の歌い方なんですけど。でも、当時は自分は「いい」と思ってたけど、「癖が強い」って言われるから封印してた。「あ、自分は癖が強いんだ」「じゃあ、もっときれいな歌い方をしたほうがいいのかな」って。だから封印したけど、こうやって自分の曲出すとなったら、やっぱり自分の曲だから自分っぽくやればいいかなって。「ここがおいしい」っていうところは、自分なりにはわかってる気はするんですよ。
――うんうん、そうだね。れんくんは、そこをちゃんと自分で把握してる感じがする。だからこそ、「この曲は◯◯っぽくやってみよう」とか「この曲は何色でやってみよう」とか、その出し入れがすごく正確にできてるんだと思うよ。
いまみ:ああ、本当ですか。たしかに。あんまり歌声は意識してなかった。コーラス録る時も、いかにフレディ(・マーキュリー)とロジャー(・テイラー)を使い分けるか、っていう(笑)。そっちにしか集中してなかったかも。
――なるほど。でもさ、かなり曲を作っていって、「言葉はメロディをちょっと後ろから追いかけてくる感じで出てくる」と言ってくれたけど、そうやって出てきた言葉たちは、結構強いよね。強い言葉選びをするところがれんくんにはあると思う。強くて具体的。歌における感情とか色の出し入れで、いかようにでも完成させられるという自信、自分の歌への信頼みたいなものをすごく感じるんだよね。
いまみ:表現力があるかどうかわかんないけど、多少の機微みたいなのは出せるというか。ぶっきらぼうにただ歌うよりは、ちょっとは感情入れられる気はしてる。だから、たしかにそこは意識してるかもしれない。なるべく感情を入れて歌うようにはしてます。
――うんうん。音楽を作っていくうえで、「最後に乗せる自分の歌って、すごく使えるんだよな」っていうかね。「頼りになる相棒なんだよな」みたいな気持ちなんじゃないのかな、って。
いまみ:うん。あんまり不安になったことは、ないかもしれない。
――だから、リスナーにどの気持ちになってもらいたいのかが曖昧じゃない歌だなと思う。ちゃんと「こういう感情で僕は歌っています。そして、こういう感情にきっと皆さんもなると思います」と伝わる歌というか。
いまみ:なるほど。たしかに、自分の歌を聴いた時に自分が思ってる感情で歌ってなかったら、乖離しちゃって気持ちが悪いと思う。だから、聴いてくれる人よりも、まずは自分が歌ってる感情がちゃんと作った時の感情と合致してるのかが気になる。それが、結果的に聴いてる人にも伝わってるのかもしれないです。
――うんうん。そんな感じがするよ。歌がすごく具体的というかね。
いまみ:うん、それはあるかもしれないですね。感情的な時は、すごく感情的だし。
――それが、れんくんの武器だと思う。これからいっぱい「ソングライター」っていうふうに言われると思うけど、れんくんは「シンガー」だよ。シンガーの部分かなり強いと思う。すごいアーティストは、みんなそうなんだよ。すごい人たちとも並ぶようなところにいると思う。かつての曲は、その時に吐いたゲロなわけだよね。それを今歌うということに対しては、れんくんはどんなマインドになる?
いまみ:なんか不思議な感覚で。当時は苦しすぎて吐き出したものが、今になってたまにひとりで家で歌ったりした時に、そのツラかった頃の気持ちに100%で入り込むことはなくて。どこか客観的に、部屋で引きこもってる当時の自分を別の位置から見ているというか。曲によって悲しい曲を悲しいまま歌うこととかもあるかもだけど、デフォルメされた過去を歌ってる時は、少しユニーク。皮肉とユーモアで消化してる感覚みたいな。
――うんうん。
いまみ:友達と恋バナとかしてて、「昔の元カノがヤバかった」って笑いながら話す感じじゃないけど、自分で過去を少し嘲笑してる感じ。あんまりツラくなったりはしないかも。
――要するに、対象化。体験を対象化するっていう。
いまみ:うん。そんな感じです。
――対象化するという行為があるとして、それは曲を書く時に起こるもの? それとも歌う時に起こる? もしくはどっちの時も?
いまみ:どっちもある気がしていて。本当にしんどくて曲作る時は…………ギターを握っていないと包丁とかを握り出すかもしれない時があったから、一旦ギターで現実逃避するというか。で、気持ちのいいメロディとかを自分で作って、その感情を消化させていく。だから、対象化っぽい要素から曲を作る時はあるけど、どっちかと言うと歌う時のほうが自虐とはまた違うけど、みんなに「聞いてよ」っていう感じで話すのと一緒で。「こんなツラいことがあったんだけどさ」みたいな。そうやって歌うことが、今後もライブとかであるんじゃないかなって思いますね。
――その感覚はすごく正しいと思う。うん、これから先も歌えると思うよ、その感覚があれば。「あの時のゲロの味を思い出さなきゃ」ってやると、どこかで歌えなくなる時がくるというかね。
いまみ:そうだと思います。だから、ライブも紙芝居みたいな感じで、「昔こういうことがありました」「みんなもツラいことがあるかもだけど、僕も一緒だよ」ぐらいの感覚でやれたらいいなって思ってます。
――この曲たちを作った時と今で変わってきてることもあると思うことがいろいろあると思うんだけど、そのなかでも聴き手の存在というものは、れんくんのなかでどうなっている? かつてはどういうふうに存在していて、あるいはかつては存在していなくて、今はどういうふうに認識しているのか。
いまみ:今はもうめっちゃ気にしちゃってます。それもよくないなと思ってるんですけど。今までは自分が「気持ちいい」と思ってたことが、ちょっと評価されるものになってくると、開発的な考え方がやってきて、「これは果たしていい曲なのか?」って考えるようになっちゃって。今まではそんなこと別に一回も考えたことなかったのに。評判が気になり出す、みたいな。だから、今はがんじがらめっぽくなってますよね。聴き手とか評価とか、まわりの目線を気にしちゃうタイプだからこそ、本当はそこは切り分けないとだけど、今は出だしなのもあるし、なんか難しいところだな、って。ちょっと気にしちゃってます。「こういう曲が好き」みたいなコメントとかくると、「もう一回同じようなものを作れってこと?」みたいに思っちゃう。
――なるほどね。れんくんは、世のなかに対する解像度がすごく高い人なんだと思う。世のなかに対する解像度というものが高ければ、世間の動き方の機構の部分がわかるし、興味もあるし。だから、それと同じように、ファンになってくれる人が何を思ってるのか、その発言がきたところが感覚的にわかっちゃうという。
いまみ:たしかに。めっちゃ考えてるかも。
――だから、狙いに行くこともできちゃう。
いまみ:そうなんですよね。やろうと思えば、狙うことも不可能ではないとは思う。でも、まだその筋力は足りてないから、今がいちばん宙ぶらりんな状態。「どうしよう?」って。「ちゃんと筋トレをしなきゃな」という感覚です。
――れんくんは、ちゃんと洗練していけるんじゃないかな。そこは自信を持って磨いてほしいな。
いまみ:今回の5曲含めて、今聴いてくれる人たちに対して媚びてる感覚はないから、自分が好きな風にやらせてもらってる。今後もあんまり気にしないようにはしつつ、でも汲み取りすぎる部分もちょっとあるから、うまいとこ、そこを活用できたらいいなと思います。
――これからの活動のビジョンはある? 漠然とでも聞かせてもらえたら嬉しいな。
いまみ:今後何やろうかな、って。でも、今はいろんな曲に興味があるから、「アイドルの曲作ってみたいな」とか「ミュージカルっぽい曲を作りたいな」とかはありつつ、ライブもまだやってないし、お客さんがどういう感じなのかも、距離感も、何も掴めてないから。
――うんうん。
いまみ:だけど、ひとつ目標というか、すごく抽象的なんですけど……今の僕と同い年ぐらいのバンドマンとかアーティストの界隈を侵略しに行きたいというか、その第三勢力になりたいというか。自分がライバル視してる人たちのお客さんに、3番手、4番手ぐらいに自分の曲が入ったらいいな、って。
――全部が全部そうじゃないけど、失恋のパワーってすごいじゃん? そういう貯金じゃない形で曲はガンガン作れそう? 失恋以外の貯金というかね。
いまみ:失恋以外の貯金で曲作るの、結構難しいかも。「難しいかも」というか、あんまりやったことないからなのもあるけど。でも、やってみたいとは思ってるんですよね。失恋以外でも、躁状態の曲でも、鬱状態の曲でもいいし。自分がちょっと斜めに見てるような思考とか価値観をそのまま吐き出してもいいと思うし。失恋じゃなくても、なるべく皮肉とユーモアを大事にしたいとは思ってます。「頑張ろうぜ!」っていうめっちゃ明るい曲はたぶん作らないだろうけど、ちょっとニヤニヤしながら「もうちょい頑張ってみますか」って歌う曲とかは作ってみたい。作れるかな? でも、失恋以外でもいけそうな感覚はありますね。
――そういう曲も聴いてみたいね。
いまみ:たしかに。じゃあ作ってみます。
――ぜひ作ってみてよ。とってもいいアーティストだと思いますよ。
いまみ:本当ですか。
――とてもいいし、必然として求められるアーティストになると思う。たとえば、「昨日の夜、君はなんで既読スルーをしたの?」とかみんなが気にすることを、「そんなことはどうでもいい」と思える人というか。そういうところじゃなくて、本質的な部分「人間のカルマって何なんだろう?」「どうやって肯定するんだろう?」というようなゾーンにれんくんは行けるんじゃないのかな。
いまみ:たしかに。自分ごとだけど、意外と共感してくれる人がいてびっくりしてるんですよ。だから、「もうちょっとこれを続けてもいいのかな?」というふうには思います。
――うんうん。マジで期待してます。言葉にちゃんとオリジナリティがあるし、引っかかることをちゃんと探してくる人だなって思う。ジェネラルな言葉じゃなくて、ちゃんと自分のなかで開発した言葉が出てくるよね。
いまみ:ああ、そうかもしれないですね。造語作るの、好きだったから。あと、よく案の定の三乗というか。中学生の頃は、案の定すぎることを言ってたな。
――当たり前すぎるよっていうのをね。
いまみ:はい。
――でも、もともとそういう感性が自分の呼吸としてあるんじゃないのかな。そういう人のほうが、やっぱり楽しいよ。ジェネリックなことしか言えない人もいるし、あえてジェネリックな言葉しか使わない人もいるし。だから、インタビューをしていても、その鍵を解くには時間がかかるんだよ。でも、れんくんはちゃんと正面から出してくる。話をしていても、非常に面白かったです。
いまみ:ありがとうございます。
――たくさん曲を書いてください。
いまみ:はい、頑張ります。
――吐くように書くだけじゃなくて、テクニカルに書いても君は絶対に素晴らしい曲が書けるから。
いまみ:ありがとうございます。