山本彩、全国8ヶ所を巡った初めてのアコースティックツアー最終公演 大阪への凱旋で見せたありのまま 「皆を支えられる歌を歌っていけたら」
2024.10.07
2024年10月4日(金)、山本彩が大阪・なんばHatchにて全国8箇所を巡った自身初のアコースティックツアー『Sayaka Yamamoto Acoustic Tour 2024 「Organic」 supported by niko and ...』のファイナル公演を開催した。2024年1月に開催したFCツアーを皮切りに、ホールツアー、ソロ活動後初のアジアツアーと怒涛のライブを重ねてきた山本。有機的を意味する“Organic”を冠したタイトル通り、舞台上には飾らない山本の姿があった。
定刻を少し過ぎ、大きな拍手に迎えられて山本が姿を現す。舞台上には草花が生い茂り、舞台中央に位置するアコースティックギターと共に、本ツアーのコンセプトをひしひしと伝えている。会場に漂う張り詰めた空気を弛ませるように「『Organic』ツアーへようこそ。緊張感持って観てくれていますけど、リラックスして聴いてください」と笑いを誘うと、さらりとギターを弾き始め「愛なんていらない」でキックオフ。はつらつとしたカウントから大切な人との些細な日常を紡ぐ「君とフィルムカメラ」へ雪崩れ込むと、早速客席からはクラップが発生する。アコースティックギター1本のみのミニマムな編成によって、濃く縁取られた山本の凛とした歌声が客席を満たし、目を細めて耳を傾けたくなる柔らかな空間が建設されていく。ゆらゆらと揺蕩う山本の風姿も印象的で、今日が春の陽だまりを彷彿とさせる優しい1日になることを冒頭数分で確信する。
本ツアーの相棒であるギタリスト・弓木英梨乃を舞台へ呼び込むと、「ここらで声出ししときましょうか?」と開演前恒例だったという「えいえい、オーガニック!」の円陣を会場全体で組んだ。気合いもバッチリ入ったところで、「どうしてどうして」で猛進をスタート。弓木のギタープレイでソリッドなエッセンスが加えられたギター2本のアンサンブルが疾走感を演出すると、「大阪、飛ばしていきましょう!」「大阪、声上げろ!」とアジテートしつつ、「JOKER」「Are you ready?」を連投する。どんどんと熱を上げていく山本に、ファンもハンズアップとシンガロングで応答。力強くなるカッティングがボリュームを上げる中、<We are ready! もう大丈夫 この先はひとりじゃないよ>(「Are you ready?」)の一節をはじめとするストレートなメッセージを届け、ここまで積み重ねてきたバンド編成でのライブにも負けないパワフルな一幕を完成させた。
「一気に大阪の熱を感じました」と称した前半戦を終え、山本は「音楽を始めるキッカケのアーティストの曲です。初心に帰る気持ちで演奏できたら」とアヴリル・ラヴィーンの「Keep Holding On」をカバー。原曲の壮大さはそのままにたっぷりとロングトーンを響かせ、ここまでの攻撃的なムードを一変させる。続けて投下された「あいまって。」では弓木が爪弾くアルペジオに呼応して、ステージに点在するランプにオレンジの光が灯っていく。ポツリポツリとライトが光る様子は星々の輝きのようであり、ステージ上の草花も部屋に飾られる観葉植物とオーバーラップする。哀愁を纏ったエアリーな山本の声色はワンルームで独り歌っている情景を呼び起こし、忘れられないあの人の体温を思い出す寂しい夜を眼前に出現させた。
「しっとりと聴いてもらったので、ここからは後半戦! 上げていきます!」と宣言すると、まずはラテンチックなギターがシンボリックである「oasis」を投下。間髪入れずに、<ストレート一本勝負よ>の情熱的なリリックがシンプルな編成に込められた挑戦心を象徴した「喝采」、立ち上がった山本が自由に歩きまわる一方で、オーディエンスがタオルや腕を振り回した「Let's go crazy」へ突き抜けていく。ラストは「好きなものを好きで居続けることは簡単じゃないけど、より一層歌うことやライブをすることが大好きになりました」と改めてツアーを振り返り、「支えてもらっている以上に皆を支えられる歌を歌っていけたら。皆に感謝と愛を込めて」の言葉から「Larimar」で優しいエールと共にピリオドを打った。
アンコールではツアーTシャツに着替えた2人が、地元である大阪に帰ってこられたことの喜びやファイナルへの寂しさに触れ、「47都道府県ツアーやりましょう」と堅い約束を交わす。至極当然のことではあるが、ドラムやベースが不在の中、初対面の相手とショータイムを創り上げることには不安もあっただろう。しかし、夫婦漫才さながらのMCや「Are you ready?」でのギターリフユニゾンを筆頭とする拍感の共有されたデュエットには、2人の相思相愛っぷりが滲んでおり、『Organic』ツアーの充実度を伝えていた。「ひと月ズレてしまったんですが、学生時代に思い入れのある曲」と告げたRADWIMPSの「セプテンバーさん」を経て、最後に鳴らされたのは「ブルースター」。「帰り道、この曲を聴いて余韻に浸ってもらえたら」と語った通り、困難な現実に直面しても解けない魔法をかけて、そっとエンディングを迎えた。
「ブルースター」を終えたのち、山本は「歌詞飛ばしたな!」と赤裸々に暴露したのだが、このワンシーンでライブが締めくくられるというのも、極めて『Organic』ツアーらしかったと思う。ロックスター然としたスタイリッシュな一面だけでなく、楽屋を垣間見るようなお茶目な側面までを隠すことなく伝えた山本は非常に魅力的であると同時に、「飾らなくてもファンは受け入れてくれる」「ありのままの自分が最強だ」という信頼や自信にも満ち溢れていた。初めてのアコースティックツアーを完走した山本の次なる舞台は、初めての対バンツアー『SYnergy』。ライブ終盤「精神的にも技術的にもまだまだできていないことを体験できたらな」と話していたように、山本の挑戦はまだまだ続いていくのである。
Text:横堀つばさ Photo:小野寺アン
【SET LIST】
01.愛なんていらない
02.君とフィルムカメラ
03.どうしてどうして
04.JOKER
05.Are you ready?
06.Keep Holding On
07.あいまって
08.残影
09.心の盾
10.oasis
11.喝采
12.Let's go crazy
13.Larimar
[ENCORE]
En1.セプテンバーさん
En2.ブルースター
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